はじめに
eli-newは、未知の話題を「前提知識のない大人が、全体像をつかみ、自分の言葉で説明できるレベル」へ変換するCodex Skillです。完全な技術理解ではなく、誤解の少ないメンタルモデルを作ることを目標にしています。
名前は“Explain Like I'm New”の略です。eli5の覚えやすさを残しつつ、「幼児向け」ではなく「その分野では新人で、前提知識がない」という状態を表しました。
この記事では、既存のeli5をそのまま使わずにeli-newを作った理由、説明の深さを固定する設計、Codexでの使い方、skills-only Pluginとして公開するまでを紹介します。Codex向けのほかの選択肢はCodex Skill/Plugin 9選でも比較しています。
eli-newは2026年8月28日に、GitHubでホストするOrito Codex Pluginsへ公開しました。これはOpenAI公式のUniversal Plugins Directoryとは別の公開先です。
なぜ既存のeli5をそのまま使わなかったのか
ELI5は“Explain Like I'm 5”に由来し、専門知識のない人にも分かるように説明する考え方です。今回参考にしたeli5 Skillは、大きな図と少ない言葉を使い、自己完結したHTMLで理解の入口を作ります。
この方針は、文章だけでは関係を追いにくい仕組みを直感的に捉えるうえで有効です。一方、「5歳向け」という表現だけでは、説明の深さや、どこで説明を止めるかを一意に決められません。
- 単純化しすぎると、「便利な仕組みです」のような抽象的な説明で終わる
- 具体化しすぎると、専門用語、設定手順、実装詳細が本編へ増える
- たとえを優先しすぎると、実際の用語との対応や限界が分かりにくくなる
必要だったのは年齢の置き換えだけではありません。対象読者の前提知識、読み終えたときの理解目標、説明を止める位置をSkillの契約として定義することでした。
baselineで説明の止めどころを確認した
Skillを作る前に、OAuth 2.0、データベースのインデックス、DNSの3題で一般的な説明を比較しました。これはモデル一般の性能を測るベンチマークではなく、Skillへ何を明記すべきかを探すためのbaselineです。試行回数、成功率、読者への効果は評価していません。
確認できた傾向は次のとおりです。
- DNSは、名前と接続先を対応させる役割を中心に、比較的適度な深さへ収まった
- OAuth 2.0は、アクセストークン、スコープ、リフレッシュトークンなどの専門語が本編へ増えた
- データベースのインデックスは、SQL、B-tree、複合インデックスまで進み、最初の説明としては詳細になりすぎた
問題は説明能力ではなく、出力ごとに「どこで止めるか」が変わることでした。そこでeli-newでは、説明する順番だけでなく、実装手順、網羅的な種類、歴史、例外一覧へ進む前に止めることも明記しました。
eli-newが想定する読者と完成条件
eli-newが想定するのは、子どもではなく、その話題について前提知識のない大人です。分かりやすさのために幼児語を使うのではなく、必要な専門用語を初出時に定義し、平易な言葉と具体例で関係をつなぎます。
読み終えた人が次の4つに答えられることを、本編の完成条件にしました。
- それは何か
- なぜ必要か
- 高い水準ではどう動くか
- 具体例を1つ挙げられるか
すべてのAPI、設定方法、例外を覚えることは完成条件に含めません。最初に正しい地図を持ち、必要になったときに詳細を学べる状態を目指します。
説明を6段階に固定した
eli-newの本編は、次の順序で説明します。
- 何のためのものかを1〜2文で示す
- 具体例、または誤解を生みにくい有用なたとえを1つ示す
- 具体例の登場人物や物を、実際の用語へ対応させる
- 重要な要素を3〜5個に絞った図で、仕組みを示す
- 省くと誤解につながる重要な限界・境界を1つ示す
- 追加説明が本当に必要な場合だけ、「One level deeper」へ分離する
具体例を先に置くだけでは、現実の仕組みとの関係が曖昧なままです。そこで、具体例と実際の用語の対応を独立した段階にしました。また、たとえが実物と完全に一致するとは限らないため、重要な境界も本編に残します。
図の要素を3〜5個程度に絞るのは、すべてを省略するためではありません。最初のメンタルモデルに必要な登場人物と流れを、一度に追える範囲へ収めるためです。
SkillをPluginとして公開するまで
対象読者、説明順序、説明を止める位置、出力形式をSKILL.mdへ定義し、表示情報とPluginの定義を添えてOrito Marketplaceで公開しました。作成時の構成は公開リポジトリで確認できます。
Orito Marketplaceからインストールする
最初にOrito MarketplaceをCodexへ追加します。
codex plugin marketplace add orito-inc/codex-plugins
次にeli-newをインストールします。
codex plugin add eli-new@orito
インストール後は、新しいCodexセッションを開始してください。既にMarketplaceを追加している場合、最初のコマンドを繰り返す必要はありません。
SkillとPluginの違いや、導入前に確認したい権限はCodex Skill/Plugin 9選で整理しています。
eli-newの使い方と出力仕様
新しいセッションで、説明してほしい話題と一緒に$eli-newを呼び出します。
$eli-new を使って、OAuth 2.0を前提知識のない大人向けに説明してください。
成果物は、自己完結したHTMLファイル1つです。
- HTML/CSSまたはinline SVGで、見やすい図を作る
- CDNや外部アセットへ依存しない
- 同名の既存ファイルを上書きしない
- 明示的に依頼されていなければ、ブラウザを開かない
- 明示的に依頼されていなければ、公開やアップロードをしない
この呼び出し例で実際にeli-newを使い、OAuth 2.0を説明するHTMLを生成しました。下の埋め込み内はスクロールして読めます。
表示が小さい場合は、OAuth 2.0の実例HTMLを単独で開くと全画面で確認できます。
ファイルを生成したあと、表示確認まで依頼する場合はブラウザ操作を明示します。Codexで画面確認を分担する方法はPlaywright MCPとplaywright-cliの違いを参照してください。
向いている場面と注意点
eli-newは、初めて聞く技術や業務用語について、関係者と会話を始めるための共通の地図が欲しい場面に向いています。
- 技術者ではない担当者へ仕組みの全体像を説明する
- 新しい分野を学び始める前に、重要な登場人物と流れを確認する
- 設計や障害の詳細へ進む前に、チーム内の言葉をそろえる
- 文章だけでは追いにくい処理の関係を、図で確認する
一方、生成されたHTMLだけを正式な仕様書、セキュリティ資料、実装手順として扱うべきではありません。3〜5要素の図は理解の入口であり、実際のすべての分岐や例外を表すものではないためです。
要件、受け入れ条件、未決事項を実装担当者へ渡す場合は、説明用のeli-newではなくimplementation-brief Skillのように、仕様の境界を扱う別工程を使います。重要な判断では、HTMLの説明から一次資料へ進み、実際の仕様を確認してください。
参照元
確認日: 2026年8月28日
- OpenAI「Build skills」
- OpenAI「Package your plugin」
- OpenAI「Submit to the Universal Plugins Directory」
- Orito Codex Plugins
- Orito Codex Pluginsの
eli-newPlugin - ELI5配布元GitHub
- ローカルの
eli5、eli-newの各SKILL.mdおよびeli-new/agents/openai.yaml(2026年8月28日時点)